INSEAD

INSEAD MBA 留学記 ①:Class of 19D P1(第1学期)の振り返り

さて、かなりブログの更新に間が空いてしまいましたが、だんだんと時間が取れるようになってきたので、留学生活の振り返りをしておきたいと思います。

僕はClass of 19Dという2019年12月に卒業するクラスに属しており、INSEADは5学期制で、各学期の事をPeriodの略でP1〜5と呼びます。まずはP1(2019年1月15日〜3月7日)に関する雑感から。

優秀な同級生と言葉の壁

日本人留学生がまずぶつかる壁、英語の壁、というやつに僕もぶつかりました。

おまけに、言葉の問題を脇においても同級生が優秀。ハーバードにオックスフォードなど、名だたる大学を出て、仕事でも成果を出してきた精鋭が集まるトップスクール。

仕事で英語を散々使ってきたはずなのに、どうしても英語の議論になると、周りに比べて内容の理解が粗く、一呼吸余計に時間がかかるため、クラスでもグループワークでも思うように発言できないという状況が続きました。

留学生活も後半に差し掛かった2019年9月現在、かなり言葉の壁は何とかできるようになってきたものの、できる事が増えるほどできない部分がよく見えるようになるもので、理想とする状態には依然程遠いです。

もっと英語ができれば・・と思う事は多々ありますが、逆に留学に来ていなかったら今のレベルにすら達していなかった・・と思うと、それはそれでゾッとするので、留学に来た事で、四苦八苦しつつも英語を鍛えながら、世界中の優秀で面白い人達と関わる機会が持てた事には心の底から良かったなと思ってます。

“Assertive”って、分かる?

僕は日本人としても内省的・内向的な方で、自分が話をするより相手の話を聞いて考えたり相槌を打つ方が基本的には心地良い人間です。

そんな話もした上で、PLDP(Personal Leadership Development Program)という自己理解を深める通年のカリキュラムの一環でスタディグループを担当してくれるコーチが、少しグループワークを観察した上で、個人面談の際に「もっとトムは“assertive”になる事を意識した方が良いね、というか“assertive”って、分かる?」と言われました。

辞書サイトだと「断定的な」「主張の強い」といった意味になっていますが、これはニュアンスを捉えきれていなくて、「相手の事を慮りつつ言いたい事を自信を持って言う」という感じの意味です。

何も言わなくても気持ちが伝わる「阿吽の呼吸」を尊ぶ日本語にこの言葉の直訳がないのは興味深いと思います。ぴったりくる言葉が無い以上、日本語を話す日本人にとっては理解しづらいスキル・心構えである一方、異なる社会規範・考えを持った人々と付き合う時のあるべき自己主張の方法論として避けては通れないものであるとも言えます。

習得のコツとしてコーチに勧められた心構えとしては
・はっきりポジションを取る
・明確かつ適切なタイミングで相手に意見を伝える
・衝突のリスクを恐れない

逆に悪い例を考えるとわかりやすいのですが
・衝突する事を避けるために
・本当は満足してないけど立場を曖昧にしておいて
・後になって遠回しに文句を言う

みたいな事態が最悪・・って割とこういうことって日本でちょくちょくある事のように思います。

ある意味、すごく当然のことなんですが、日本人である自分にとっては存外実践が難しいコンセプトに感じられて、あるべき自己主張の物差しとして、INSEADや卒業後の職場で気をつけていこうと思ったのでした。

“パーティースクール” INSEAD

さて、INSEADはパーティースクールの異名を取る事でも有名(?)ですが、実際にパーティーは多いです。

大きな家を借りてる同級生の自宅でホームパーティーをやる時もあれば、バスを数台貸し切って修道院だった建物を即席クラブにして深夜までダンスパーティーしたり。

https://twitter.com/tominsead/status/1081657198206439425?s=20

https://twitter.com/tominsead/status/1097878807263019009?s=20

学生生活において、睡眠・学業・社交の2つまでしか両立する事はできない、という有名な格言があり、個人的にはこちらのサイトにある下記の図が好きです。3つ並行する事は「物理法則に反する」との事。。笑

INSEADのMBAは1学年500名、常に2学年がキャンパスにいるので合計1,000名。これが3:2の割合でフォンテーヌブロー・シンガポールの両キャンパスに割り振られる事になりますが、1年という短い時間の中でこれだけの人数とただ出会って言葉を交わすだけでもなかなか大変。パーティーのような機会に大勢が一堂に会して、どんどん色々な人と知り合っていくという事が重要だからこそ、これだけパーティーが盛んなんだなと実感します。

このパーティーというのも日本人留学生にとっては曲者だと思っていて、特にダンス・立食の形式だと、周りの話し声やBGMでかなりザワザワしてる中で人がハイテンポで参加しては去っていく大人数での会話が多くなるため、言葉の壁の難易度が格段に上がります。何を話して何に笑ってるのかよく分からんというのは日常茶飯事です。

ただ、面白おかしく酔う事の楽しさや落ち着いて話ができない事への不満というのは国籍に関わらず感じる事のようで、しばらくするとパーティーが好きな人とそうでもない人に別れていったように思います。

シェアハウスのススメ

僕はシェアハウスに住む事にしたのですが、これはとても良い決断だったと思います。

9つの部屋が全て同級生である19Dの学生で埋まっていて、どんどん友達を作って輪を広げていきたい時に、同じ家に住む事でサクッと仲良くなった人がいるというのは心強かったです。

時々家でご飯を作って一緒に食べたり、リビングでダラダラだべったり、誕生日をお互いにお祝いしたり、ハウスメイトに恵まれたのもありますが、家賃や立地が多少不利になってもシェアハウスに住む事で人と関わる接点が増えるというのは良いものだなーと思います。

https://twitter.com/tominsead/status/1102670641520697345?s=20

それと、英語圏ではかなり有名だという「Cards Against Humanity」なるものを誰かが持ってきていて、一緒に住んでる間に結構これで遊んだ事は良い思い出ですね。学校で絶対に教えてもらえない英語のすごく良い教材だと思うので、MBA留学をこれからされる方にはぜひ触れてみて頂きたい代物です。笑

Exemption(授業免除)をどうするか?

INSEADではみっちり詰まったスケジュールの事を勘案して、既に一定の知識のある必修科目については、受講前の試験で所定の点数を取る事で免除してもらう事ができます。

僕はExit Language(第二外国語)である仏語はDELF(仏政府公認の試験)を入学前に受けてパス、他に1学期の必修である2科目を免除されました。
・Uncertainty, Data and Judgement(統計)
・Prices & Markets(ミクロ経済学)

INSEADにおけるExemptionの仕組みについてはこちらのツイートにまとめたのでご参照を。

https://twitter.com/tominsead/status/1080870311892041728?s=20

Exit Language(第二外国語)について

基本的にはExemptionを取っておいて良かったと思います。というのも、入学後にやろうとするとP1〜P3まで毎週1〜2コマの授業に出た上で、P3に試験を受けて、(大体はそこでパスするのですが)合格できないとP5にもう一度チャンスが与えられて、そこでもダメだと他の単位が取れていても言語の試験にパスするまで学位を取れないそうです。

ちゃんと対策すればきちんと合格できる試験なのですが、ただでさえ忙しいP1〜P3に毎週1〜2コマの語学授業というのは地獄です。概ね同じクラスの同級生がお昼を食べに行く時間とか、早朝とかに講座がねじ込まれるからです。

もし仏語におけるDELFのような認定試験がない、あるいは受けられないとしても、入学前に1ヶ月ほどフォンテーヌブロー・シンガポールキャンパスで第二外国語の集中講座を開催してくれるので、そこに出席した上で入学時点で試験を受けてパス(集中講座に出たら普通はパスすると言われている)という選択肢もあります。

この場合は単に第二外国語の授業をパスできるだけでなく、1ヶ月という期間に渡ってこれから同級生になる学生と一緒に時間を過ごす事になるので、自ずと仲良くなって絆が深まる効果があります。入学した時に案外この集中講座で既に友達になっている人達が多くて、羨ましく思った記憶があります。笑

その他の必修科目について

こちらは長短あるなあと思っていて、2科目も免除があると授業だけでなく期末試験もパスできるので忙しい1学期を楽に過ごせる反面、入学当初に少しでも同じ時間を共有して仲良くなりたいクラスメートとの時間が減る上に、免除されるくらいに得意な科目の授業で発言したり他の生徒の勉強を手伝ったりと、交流・貢献の機会を失う事にもなるなあと思いました。

もし最初に戻ってやり直すなら、免除しない事を選択するような気がします。

勝手に授業を格付け!

さて、最後に自分が受けた授業を簡単なコメントともに独断と偏見によるランキング形式で紹介して、本記事を締めたいと思います。必修科目なので選択の余地はないけれど、Exemptionを取ることもできるし、何かの参考になれば嬉しいです。

1位:Introduction to Strategy(戦略論)

評価:☆☆☆☆☆
教授:Mr. Ithan Stern

1学期の科目では断トツでこれが面白かった!
戦略コンサル出身の同級生に言わせると基本的な事の振り返りで退屈だったようだが、毎回様々なテーマのケースをクラスで議論しながら戦略論の基本的なフレームワーク(SWOTとかPorter’s 5 Forcesとか)を紹介して理解を深めていく授業。

教授のファシリテーションがさすがで、時々ジョークを交えながら、議論を発散させて収束させる技量は見ていて小気味よく、毎回楽しみにしていました。

https://twitter.com/tominsead/status/1102314066658381829?s=20

極め付けは授業の後半に行われるMaster Strategist DayというCase Competitionで、実在する企業のケースをこの日のためだけに書いて、丸一日かけて全学年一斉に約60のスタディグループごとに解決策を提言して、最優秀チームを選出するというもの。今年はとあるアフリカのヘルスケア系企業が題材となり、その創業者と役員が審査員として来てくれて、また検討のサポート役としてMBBの1社からコンサルタントが10名弱も駆け付ける豪華っぷり。

ここでの議論は1年を通して行われるPLDP(Personal Leadership Development Program:リーダーシップ育成のための自己理解プログラム)とも連動して、自身の成長・課題の定点観測の材料にもなるなど、かなり練られたカリキュラムで、ビジネススクールならでは感が満載でとても有意義なものでした。

なお、1学年が4クラスに別れて2名の教授のどちらかに教わるのですが、もう一方の教授に教わったクラスはぶうぶう文句言ってました。苦笑 ので、残念ながら教わる人によって体験が変わるというのも現実。

2位:Uncertainty, Data and Judgement(統計)

評価:☆☆☆☆★
教授:Mr. Miguel Lobo

Exemptionを取っていたのですが、アクチュアリーとしては統計という小難しいものをどう分かりやすく語るのか、という点に興味があって、結局ほとんど出席した授業。

定量的なクイズを当てずっぽうで答えさせて、いかに人間の感覚が事実とズレるのか、という事を見せつけた上で、人間の感覚を補うための統計という位置付けを明確にして、理論は適宜端折りつつ直感的に腹落ちしやすい説明が展開されます。

https://twitter.com/tominsead/status/1086032319184601088?s=20

https://twitter.com/tominsead/status/1094696948811075586?s=20

アクチュアリーとして統計の理論を一通り学んだ身としては、知識の面で新たな発見は特に無かったですが、一般的なMBA生が厳密な理論を学んだところでそれほど役に立つわけでもなく、バランスはちょうど良かったと思います。

平均・中央値などの基本的な統計量の説明から入って、最終的には線形重回帰モデルの意味を理解できるところまでやるのは恐らくどこのビジネススクールでも同じだと思いますが、回帰分析に入ったあたりからデータと回帰分析結果の説明に終始して、あまり面白く無くなったのは少し残念でした。周りの学生の反応も明らかに悪くなった印象。まあ、これは回帰分析という題材自体に問題がある気はします・・。

3位:Prices & Markets(ミクロ経済学・ゲーム理論)

評価:☆☆☆★★
教授:Ms. Lucia Del Carpio

こちらもExemptionを取ったものの、なんか自分だけ授業を受けないのも何だか寂しく、同じく学生時代に一通り勉強したミクロ経済学をINSEADではどう分かりやすく教えるんだろうと興味本位で出席した授業。

やっぱり経済理論の数式を説明する段階になると、チンプンカンプンな同級生も多々いたようですが、大きなコンセプトを直感的に伝える工夫はこの授業でも見られて、学生同士に取引ゲームをさせたり、engagementを上げる事を本当に重要視してるなあと感じました。

https://twitter.com/tominsead/status/1085312466228256768?s=20

教授の語り口もエネルギッシュかつチャーミングで、授業が分からんという文句は時々聞きましたが、概ね評判は悪くない授業だったように思います。

個人的には、1回切りではなく繰り返しになる時のゲーム理論の最適解は初めて知ったので、これはその後に受ける競争戦略や交渉にも通じる概念で興味深かったです。

https://twitter.com/tominsead/status/1100478662418354176?s=20

4位:Financial Accounting(財務会計)

評価:☆☆☆★★
教授:Mr. David Young

財務会計という科目自体、正直そんなに面白くないというか、必修なのでしゃあないから授業に出る、というテンションだったのだが、既に約30年にわたりINSEADで教鞭を取っている教授で、とにかく授業の発言の切り盛りが鮮やかすぎて、漫談を聞いているような錯覚に陥る時も。

簿記2級程度の基礎知識はあったので何か大きな次元での学びがあったというわけでもなく、細かな会計理論・基準上の決まり事は既に忘れつつあるが、授業に出るたびに2-3回はゲラゲラ笑ってたなっていう記憶があるので、こんな順位に。。笑

5位:Financial Markets & Valuation(ファイナンス基礎)

評価:☆☆☆★★
教授:Mr. Adrian Buss

正直言って、周りでは1、2を争うくらい評判の良い教授で、実際に教材も授業でスライドを投影するだけでなく、独自に復習・予習用のビデオがあったり、練習問題が準備されていたり、ファイナンスの予備知識がゼロの人を一定のレベルに引き上げるという目的においてかなり計算された教育を提供してくれていたように思います。

ただ、学生時代にファイナンスを専攻してるので、目新しい学びというものが特になく、財務会計のようなエンタメ的な楽しみも薄かったので、何か間違ってる気もしますがこの順位に。期末試験でも、一番勉強してないのに一番良い成績が取れる始末。。

6位:Organizational Behavior 1(組織行動学1)

評価:☆☆★★★
教授:Ms. Ella Miron-Spektor

Organizational Behaviorは1学期に「個人の心理学」、2学期に「組織の心理学」をやるという建て付けになっており、この授業では個人に焦点を当てて
・どんなリーダーシップを取るべきか
・チームで働く時にどんな振る舞いをすべきか、どんな心理状況に陥るか

といった事柄を学びます。

内容的にはまさにMBAの王道な授業なんですが、答えの出しづらい分野だけにクラスでの議論がよく発散しすぎるし、教授としても答えを出すのではなく色々な考えがある事を知る事が重要だというスタンスで、授業が終わってもあまりこれといったtakeawayが思い浮かばない事がしばしば。。。

ホラクラシー(ヒエラルキーが無いフラットな組織)の概念は知らなかったので面白かったですが、これもマズローの段階欲求説とか、既に誰もが知っている理論に紐づけて終わるなど、なんかeye openingな経験に乏しく、少々残念な感じでした。

https://twitter.com/tominsead/status/1100519872780476417?s=20

この授業に関しては授業中の発言量を評価すると明確に言われていたため、何とか発言しないといけない・・という良い意味でのプレッシャーに晒されるという効果はありましたが。。

終わりに

久々の更新なので気合いが入って長文になってしまいました。最後までお目通し頂き、ありがとうございます!

更新を続けていこうと思うので、扱ってほしいテーマや質問などありましたらブログの問い合わせフォーム質問箱までコメントお寄せ頂ければ嬉しいです!