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INSEAD MBA 留学記 ②:Class of 19D P2(第2学期)の振り返り

こちらの続きでP2(2019年3月11日〜4月30日)の雑感です。

早くも「セクション」と「グループ」の解散

INSEADでは1学年約500名のうち、大体300名がフォンテーヌブローキャンパスから留学を開始し、7-80名を「セクション」と呼ばれるクラスに分けます。フォンテーヌブローが4セクション、シンガポールが3セクションあります。

さらに同じセクションの中から5~6名の「グループ」を大体15作って、授業の課題も一人でやるものとグループ単位でやるものが半々くらいの比率です。

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P1〜P2は必修授業しかないため、日中の多くの時間を同じセクション・グループの同級生と過ごすため、自然とそこが行動の中心になっていくのですが、P3からはキャンパスも自由、授業も多くが選択授業になるため、早くもこれらのセクション・グループは解散です。

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接点が薄くなる事は避けられないので、だんだんと仲良くなってきて、これからももっと仲が深められそうというタイミングでのお別れは寂しくもあり、まだあまり関わりを持てていない同級生との交流を深めるチャンスでもあり、長短はあるのですが選択の余地もないので、前向きに捉えるしかありません。

学生時代にバックパッカーだったグループメイトの一人が、人が多く期間の短いINSEADのMBAでは多くの人とたまたま出会って仲を深めてまた道が離れていく様子が、出会いと別れを繰り返すバックパッカーの旅行みたいだと言っていて、深く同意したのでした。

どちらかというと時間をかけて狭くも深い付き合いを好む自分としては、どんどん接点のある人が変わっていくこの状況は、深くも広い付き合いを構築できるようになるための人格の大リーグボール養成ギプス(ネタとして古いんだろうか?)みたいだなと思っています。仲を深めるプロセスを試行錯誤しながら繰り返していけるわけだし。

インターンに向けた活動、始まる

ところで、INSEADには年2回の入学のチャンスがあり、こんな特徴があります。

Class of D
・1月に入学して12月に卒業(Decemberの頭文字でD)
・6月終わりから8月終わりまで2ヶ月弱の夏休みがある
・アブダビキャンパスには行けない

Class of J
・8月終わり〜9月に入学し7月に卒業(Julyの頭文字でJ)
・一番長い休みのはP2〜P3の間にある3週間程度の年末年始休み
・アブダビキャンパスに行く選択肢がある

Class of Dだと夏休みにインターンをする事ができ、卒業後の就職を見据えて大手企業の有給プログラムに参加する人もいれば、将来に向けて経験を得るために給与を抑えて(あるいは無給で)スタートアップやNPOで働く人もいます。

大体3月に入ってから募集が始まり、早い人は4月中に夏の予定を決めてしまうし、夏休みの始まる6月終わりのギリギリになって決まるという人もいて、十人十色です。僕はというと、インターンはせずにバックパッカーしつつ自由研究をする事にしたのですが、また別の記事で詳しくお話ししたいと思います。

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インターンができる事はClass of Dのメリットであり、その準備のためにP2の他の活動(グループワークなどの学業やクラブ活動)が疎かにされる可能性があるというのはClass of Dのデメリットだと思います。

“コンサルスクール” INSEAD

さて、上記のようなインターンに向けた活動の中で、圧倒的に学生の関心を集めるのが戦略コンサルのサマージョブ。MBB(McKinsey、Boston Consulting Group、Bain)といった最大手から、ZS Associate、Deltaといった業界特化のブティックファームまで、コンサル業界における様々な企業が世界各国のオフィスで募集をかけます。

その面接の特徴の一つが「ケース面接」と呼ばれる、架空の企業のビジネス上の課題に対する分析・提言を即興で行い、その過程や結果の評価によって合否を決定するというものです。

INSEADの学生の多くは下記のいずれかに当てはまります。体感としては過半数は超えています。実際、卒業生の半分以上はコンサルになります。
・戦略コンサルに入りたい人
・戦略コンサルから社費派遣されている人
・戦略コンサルを辞めて他の事をしたい人

一つの国籍が学生数の1割を占めないように気をつけるほどダイバーシティにうるさいINSEADですが、ここはむしろはっきりカラーが出ているように感じます。

P2も数週間が経過すると各社の応募・選考プロセスが始まって、キャンパスの各所で戦略コンサル出身者による戦略コンサル希望者へのケース面接の練習が行われたり、学校側もケース面接の対策セッションを用意したり、と戦略コンサルに行きたい人にはすごく適切な環境が揃っているように思います

戦略コンサルで働きたい、あるいは働く事に興味がある、という人はINSEADはぜひ検討するべきだと思いますこちらの記事に戦略コンサル向けの就活の様子がまとまっているのでご覧ください。

その一方で、戦略コンサルを進路として考えていない人もぼちぼちおり、僕もその一味です。P2の半ばには周りが必死にケース面接の対策をしている中で、クラスでポケモンが流行ってるのにまだ持っていなくてクラスの会話に入っていけない小学生的な肩身の狭さ(苦笑)を感じる事もままありましたが、戦略コンサルに興味がなくてももちろんINSEADは楽しめるので、その辺はおいおい更新していく記事で感じてもらえればと思います。

日本食と自炊事情

少々マニアックな話題ですが、次のトピックの伏線にもなるので語っておきます。

フォンテーヌブローというフランスの田舎町で、果たして和食が恋しくなった時にはどうするのか?

実は案外と日本食はどうにかなります。
・近所にあるカルフール、モノプリ、Naturaliaといったスーパーでコメや醤油などの基本的な物は手に入る(寿司の人気が根強く、寿司の材料はネタ以外はスーパーで揃う)
・パリに行けば日本食材店がある
・学校でAmazonなどの通販で注文した品物を預かってくれる

あとは海苔やふりかけなどの乾物はかさばらないので詰められるだけ詰めていきました。海苔は地味に海外だと高めなので。

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なお、フォンテーヌブローに日本料理レストランはいくつかあるのですが、高いしそんなに美味しくないので、全然行ってません。笑 パリだと色々と選択肢が増えますがが美味しかったです。

日本料理に限った話ではないですが、フォンテーヌブローと言えどフランスのレストランは日本の金銭感覚からするとかなり値段が高く、空腹を満たして飲み物をつけるとサクッと15〜20ユーロ。毎食これでは破産するので、自ずと家で自炊らしき事をし始めます。

幸い食材は日本と同じような値段で、冷凍食材の豊富さはむしろフランスに軍配が上がる塩梅だったので、冷凍された野菜や肉をごった煮にしてスープにしたり、コメを投入しておじやにしてました。

1つ意外だったのは、海外に出るとスーパーに薄切り肉が全く無いという事。塊でしか売っていません。野菜炒めやすき焼きが食べたくなった時に困ってしまい、あれこれ試行錯誤して、結局この記事の通り、スライサーを買って冷凍した肉を加工するのがベストという結論に落ち着きました。

実際に試してみて同居人に奇異の目を向けられた時は、MBAまで来て一体何を学んでるんだろう・・?と自問自答したりもしましたが、自分で加工した薄切り肉で作るすき焼きの味は格別であるとともに、薄切り肉ひとつとっても文化というものは様々に違うんだという良い教訓を得る事ができました

日本文化と「Sushi」のパワー

さて、前振りが長くなりましたが、寿司、もとい「Sushi」はすごい!という話。

留学に来て思うのは、日本の文化や企業は相当に知名度があるという事。なかでも海外で和食といえば「Sushi」なだけあって、日本人は毎日寿司を食べてると思っている人もいるくらい。

P2はRobin Hood Scholarshipという奨学金の原資を集めるためのチャリティーオークションキャンペーンが開催されていて、寿司パーティーを企画したところ、なかなかの人気を博し、高額で落札されました。

その時の様子をINSEAD公式ブログにも寄稿したのですが、必修授業で日本の某高級寿司屋が取り上げられるほどで、こんなに関心を集められるものかと驚きました。

寿司を作れるようになっておくと留学生活が円滑に進む事、間違いなし!

なお、日本の大手企業や文化も多くの授業で引き合いに出されます。こんなところが海外の目線で見ると変わった特徴を持っており、興味深いようですね。
・独特な多角化や製品改善プロセス(例:KAIZEN)
・婉曲的/間接的なコミュニケーション(例:「前向きに検討します」の真意)
・組織内外のヒエラルキー構造(例:KEIRETSU)

海外に暮らしてみる事が、日本やそこで育った自分の事を振り返る良い機会にもなっています。いくつか記事にしてみたいテーマもあるので、おいおい整理して文章にしてみたいと思います。

勝手に授業を格付け!

最後に、今学期も授業を独断と偏見で順位付けして本稿の締めに代えたいと思います。P1と同じく必修科目なので選択の余地はありませんが、Managing Customer Value(マーケティング)についてはExemptionを取る事も可能なので、そのあたりの参考になれば幸いです。

1位:Process & Operation Management(プロセス管理)

評価:☆☆☆☆★
教授:Mr. Ville Satoppa

タイトルを見て工場とかの生産管理に関する授業かな?イラネ・・とか思っちゃっていましたが、良い意味で期待を裏切られた素晴らしい授業でした

ビジネスモデルをプロセスの観点から因数分解して、既存の製品を既存の技術で既存の市場に提供するという条件の下にどう「プロセス」を見直す事によってイノベーションを起こせるか?という事を色々な事例で学んでいきます。

例として分かりやすいのはDellですね。
・競合(Hewlett Packardとか)→需要を予測して生産したパソコンを販売するので、予測を外すリスクがあるとともに在庫を抱える
・Dell→注文を受けてから生産する事で予測・在庫に関する問題を解決でき、

教授の専門分野である需要予測については数理的なモデルが入るなど、個人的には定量・定性的な要素のバランスも心地よく、回を追うごとに好きになっていった授業でした。

なお、教授はP2最年少の31歳、僕はもちろん、学生の多くと同年代かより若いくらいで、補講を務めるのは(通常は専属の講師がいるのだが)半年先に入学した19Jの先輩、という若き才能による講義でした。

なお、期末試験で凡ミスをしてしまい、成績はP2の科目中、圧倒的に最低でした。。苦笑

2位:Corporate Financial Policy(コーポレートファイナンス)

評価:☆☆☆☆★
教授:Mr. Sergei Glebkin

P1に債券価格やプロジェクト・企業価値評価のような割引キャッシュフローの考え方、ポートフォリオ理論を終えて、P2はオプションをはじめとしたデリバティブ価格の理論とコーポレートファイナンス。

Balance Sheet Identity(貸借対照表の資産側と負債・資本側の合計が一致する事)とオプションのPut Call Parity(プット・コールオプションの価格式)が実は同じ事を表す式から株式と負債のオプション性が説明されるのはすごく美しくて、今も記憶に残っています。

他にもこの辺の話はファイナンスというより血の通った人間の所作に関する示唆があって面白かったですね。
・資本構成に基づくインセンティブ構造がAgency Cost(プリンシパル[=企業の所有者としての株主]の委託を受けたエージェント[=企業の経営者]がプリンシパルの利益[=企業価値の最大化]ではなく自己の利益を優先して行動する事)に与える影響
レモン市場の問題:レモンの市場を例に、情報の非対称性が、情報を持たない側だけでなく持つ側にとっても

背後にあるオプション理論などがややこしいので苦手な人はかなり嫌がっていた授業ですが、個人的にはほぼ毎回飛び出す教授のブラックユーモアのセンスも含めて、楽しみに聴講した授業でした。

なお、こちらの教授も30代前半で僕より若いくらい。ビジネススクールの教授が必ずしも年季の入った壮年期の人だけではないんですね。

3位:Organizational Behavior 2(組織行動学2)

評価:☆☆☆★★
教授:Mr. Eric Quintane

P1の組織行動学1は個人の心理に焦点を当てたものでしたが、P2の組織行動学2はいよいよ本題の組織を扱うもの。

企業の営みは下記のような構造にあり、必修科目期間のP1〜2で一通りの事をカバーするという塩梅になっています。
・事業戦略があり(P1の戦略論)
・その遂行のために組織が作られ(P2の組織行動学2)
・現場では個々人が様々な思惑を持って仕事する(P1の組織行動学1)

そもそも「組織」とそうでない人の集まりの線引きはどこだろう?(たまに集まって草野球をすると組織になるのか、そうではないのか)という点から始まり、「組織」の現状分析のフレームワークを与えられた上で、毎回とある企業の事例を扱うケースを事前に読んでクラスで議論し、課題や期末試験を通してフレームワークを活用した組織の課題の分析・対処の方法を訓練する建て付けで、とても整った講義形式だったように思います。

目から鱗!というよりは、仕事において、何となくそんな気がしていた・直感的に判断/行動に移していた事柄を理論で補強して、その精度を高めていくのに効果があるように思いました。

なお、組織行動学は担当する教授によってかなり内容に差が出るらしく、一意な結論を出しづらい分野なんでしょうね、やっぱり。

4位:Managing Customer Value(マーケティング)

評価:☆☆☆★★
教授:Mr. Abhishek Borah

マーケティングの授業。下記の3層に分けた建て付けで授業が進みます。
・市場/顧客セグメント分析
・マーケティング戦略の立案
・マーケティング戦略の実行

世相も反映してか、データの重要性やデータを使った分析も取り上げられましたが、全体的に定性的な話が多く、何でだろう、あまり記憶に残っているtakeawayがない・・・

個人的には、データや統計に強いアクチュアリーとしてビッグデータ・データサイエンスの側面からマーケティング分野に活動領域を変える事に興味があって、実際にアクチュアリーの先輩・同僚でそういう人が複数いたので、そのヒントを得るために期待していた分野だったのですが、期待値には残念ながら沿わなかったですね。教授の専門分野はまさにマーケティング分野のデータ・定量分析のようなのですが。。

一通り、Purchase Funnelとかそれが現代ではどう進化してるか、顧客をセグメントに分けターゲットを決めてポジションを取りステートメントに落とし込む一連の流れで何を気をつけるか、といった、言われてみれば分かるような事をちゃんと明文化するというイメージだったように思います。あくまで必修なので、以降のマーケティング系の選択科目を履修する際の基礎固めという位置付けであれば、さもありなん、という感じ。

一番思い出深かったのは、新商品を構想してそのマーケティングプランを考えるという最終課題で、日本のヘパリーゼを紹介して、それを基に飲む頻度の多いINSEAD生向けの二日酔い止めドリンクを企画して面白おかしく宣伝ビデオを作ったところ、圧倒的人気を博し最優秀賞としてシャンパンをゲットした事ですかね。

余談ですが、INSEADは売店に生ビールやワインのボトルが置いてあるので、授業の景品が結構な確率でシャンパンだったり、この辺りは大学系MBAとはかなり様相が違うんだろうなと思います。

さらに余談ですが、留学中は交流のためにかなり飲むんだろうなーと粉末ウコンの力を買い込んで行きました。友達に上げても良いし、地味にオススメの一品です。やっぱり効果を感じるようです。

5位:Managerial Accounting(管理会計)

評価:☆☆☆★★
教授:Mr. Thomas Keusch

先に断っておくと、この授業が最下位なのは教授・教材の問題ではなく、単に僕がこの科目に一番関心を持てなかっただけです。ただまあ、会計ってややこしいので何をやってるか分からんという声は多々ありました。

事業が多角化・大規模化すると、様々な製品・サービスのコストを正確に見積もれない事態がまま発生するもので
・1つの工場で3つの製品を作っており、そこにかかってる固定費・人件費をどの製品にどのように配分するか
といった問題が生じてきます。

単純な頭数割から事業活動をモデル化して可能な限り精緻に費用を配分しようとする手法(Action-Based Costing)まで、色々な方法を紹介されては実際に計算してみて違いを比較し、時々ケースを交えて頭に入れていきます。

製品・サービスの利益管理は経営において重要な基礎であり、ここを間違うと、利益の出ない製品を作りまくるようなインセンティブが働く、とか望ましくない事態を引き起こすわけで、そうならないようにするのは経営の一つの役割。

でも、正直ここは自分が細かい事ガッツリやるんではなく、得意な誰かにお願いしたいなーと思ったのでした。。。前向きに考えると、自分の好き嫌いや得手不得手を改めて確認する意味では、必修科目として色々な分野の事を一通りおさらいするのは有意義かなとも思いました。

番外編:Leadership Communication Foundation(コミュニケーション)

評価:☆☆☆☆★
教授:Mr. Ian C. Woodward

リーダーとしてのコミュニケーションの取り方を、受信・発信双方の観点で必修科目として学ばせる、というのが近年の方針らしく、P2はオンラインコースを好きな時に受講するという形。

INSEADでコミュニケーションと言えば、この本がとても有名です。

僕は入学前に卒業生の方とお会いした時に勧められて読んだのですが、INSEADでは面接の時の話材として「異文化コミュニケーション」はぴったりだし、コミュニケーションの直接・間接の度合いなど、ざっくり頭に入れておくと海外留学や赴任で人と交流する時に有意義なので、INSEADに限らず海外MBAを考えている方にはオススメの本です

僕の経験だと、IMDでも面接のためのキャンパスビジットでスタディグループで作業する部屋に入れてもらった時に、同じような切り口でメンバーのコミュニケーション特性をプロットした表が大きく貼ってあって、いつも忘れないように見てるんだなーと印象深く思った記憶があります。

さて、このオンラインコースでは、コミュニケーションを4つの型に分けて、アンケートの回答結果を基に自分はどんな特徴を持ってるのか、それぞれの特徴にどのように対処するのが良いのか(特に相性の良し悪しと留意点)、という事をざっとレクチャーされます。
・Structured
・Expressive
・Visual
・Rational

自分のコミュニケーションに関する分析レポートがもらえるのですが、概ね想定内である一方で、細かくは意外なものがあったり、考えを深める材料としては興味深いものでした。

終わりに

他の時期の振り返りはこちらになります。

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