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【書評】稀代の投資家ジョージソロスの哲学「再帰性」とは

投資家として著名なジョージソロス氏ですが、実は哲学のバックグラウンドがあるって知ってました?

哲学者を夢見て研究した事が、「再帰性」という理論に結実し、それによって莫大な投資利益を得る事ができた、という一見すると論理の繋がらない理屈がソロス自身の講義という形で語られているのがこの本です。

本書の冒頭、講義の第1回目の最初から、「再帰性」が氏の投資家としての優位性の源泉であったと自身の口から語られています。

成果を挙げた投資家の投資哲学は非常に興味のあるところです。

まず、氏の哲学の基本にある2つの命題が挙げられます。
・思考する参加者、つまり人間が参加する状況において、その参加者の世界観は常に部分的で歪む(可謬性の原則)
・その歪んだ状況認識に基づき参加者が取る不適切な行動は状況に影響を与える(再帰性)

これは、人間が合理的に判断し行動できると仮定する伝統的な経済学モデルの大前提に真っ向から対立します。

そして、市場参加者の大半が軸足を置く伝統的な経済学モデルとは異なりより優れた視点を持てた事が、氏の投資家としての実績につながっているはずです。

伝統的な経済学では、状況はとある一つの状態で「均衡」に到達し安定する、とします。

一方、この理論に基づくと、参加者が状況を「認識」し行動を通じて「操作」する事で、状況は変化していき、これが参加者の次の「認識」と「操作」につながっていきます。したがって、状況と参加者は相互に影響・フィードバックしあって刻々と変化していく事になります。

これらの前提の相違は、金融理論における「効率的市場仮説」と「カオス」の対比にも現れます。本書の中盤では金融市場を例にとり、再帰性でバブル発生と崩壊のメカニズムが説明できる事が語られています。

後半は社会や政治に対するソロス氏の見解や、財団設立のモチベーションなどが記述されています。

再帰性、言葉にするとたった3文字ですが、伝説的な投資家の根本哲学ですのでぜひ一度どんなものか触れてみてはいかがでしょうか?